「なんだか最近、一度見た商品の広告ばかり表示されるな…」と感じたことはありませんか?それは行動ターゲティング広告かもしれません。
この記事では、新しくマーケティングを担当する方に向けて、こうした広告の表示を停止・拒否する広告のオプトアウトとは何か、その基本的な仕組みから具体的な設定方法まで、わかりやすく解説します。
広告のオプトアウトとは
インターネットを利用していると、さまざまな広告が表示されます。広告のオプトアウトとは、こうした広告の表示や、そのために自分の情報が使われることを、ユーザー自身が拒否する意思表示を指します。まずは、この基本的な意味合いから見ていきましょう。
ユーザーによる「拒否」の意思表示
オプトアウト(Opt-out)は、直訳すると「退出する」「脱退する」といった意味です。マーケティング用語としては、サービス提供者側からの情報提供やデータ利用に対して、ユーザーが「いいえ、結構です」と拒否する選択をすることを指します。
オプトアウトが必要とされる理由
なぜオプトアウトの仕組みが必要なのでしょうか。それは、ユーザーが自分の情報をコントロールする権利を持つためです。特に、自分の閲覧履歴などに基づいて配信される広告を不快に感じる人もいます。オプトアウトは、そうしたユーザーが広告を停止できる選択肢として用意されています。
オプトアウトと行動ターゲティング広告の仕組み
オプトアウトが議論されるとき、必ずと言っていいほどセットで語られるのが行動ターゲティング広告です。なぜなら、オプトアウトの多くは、この行動ターゲティング広告の配信を停止することを目的としているからです。その仕組みを簡単に解説します。
行動ターゲティング広告とは
行動ターゲティング広告とは、ユーザーの過去の行動履歴に基づいて、その人の興味や関心に合った広告を配信する手法です。例えば、一度スニーカーのサイトを見たら、別のサイトでもスニーカーの広告が表示される、といった具合です。
Cookieと広告識別子の役割
この仕組みを支えているのが、Cookie(クッキー)や広告識別子(IDFA/AAID)です。Cookieは、Webサイトがユーザーのブラウザに一時的に保存する小さなデータです。特に、サイトを横断してユーザーを追跡する「サードパーティCookie」がこの広告で使われます。広告識別子は、スマートフォン(アプリ)でユーザーを識別するためのIDです。
閲覧履歴や検索履歴の活用
企業はこれらのCookieや識別子を利用して、ユーザーがどのサイトを訪問し、何を検索したかといった履歴を蓄積・分析します。その分析結果をもとに、ユーザーの興味関心を推測し、最適な広告を選んで配信しているのです。
広告をオプトアウトする具体的な方法
では、具体的に広告をオプトアウトしたい場合、どうすればよいのでしょうか。オプトアウトの方法は、広告の種類や利用しているデバイス(端末)によって異なります。ここでは代表的な方法を5つ紹介します。
Google広告の設定
Googleは、ユーザーが広告表示を管理できる「マイ アド センター」という機能を提供しています。ここでは、広告のトピックを管理したり、パーソナライズド広告自体を無効化(オプトアウト)したりすることが可能です。
スマートフォン(iOS/Android)の設定
スマートフォンでは、OSレベルでの設定が可能です。iOSでは「Appにトラッキングを要求しない」、Androidでは「広告IDを削除する」といった設定を行うことで、アプリによる広告識別子の利用を制限できます。
Webブラウザでの設定
Webサイトの閲覧では、ブラウザの設定が重要です。多くのブラウザには、Cookieの受け入れを拒否したり、削除したりする機能が備わっています。SafariやFirefoxは、この制限を標準で強化しています。
企業ごとのオプトアウトページ
広告を配信している主要な企業は、自社でオプトアウト専用のページを用意していることがほとんどです。そのページにアクセスし、手順に沿って操作することで、その企業が配信する行動ターゲティング広告を停止できます。
メール広告の配信停止
いわゆるメールマガジンも広告の一種です。不要なメール広告については、メールの最後尾などに記載されている「配信停止」「登録解除」といったリンクをクリックすることで、オプトアウトが可能です。
広告オプトアウトが求められる背景
近年、オプトアウトの仕組みがこれほど重要視されるようになったのには、大きな理由があります。それは、個人の情報を守ろうとする社会的な意識の高まりと、それに伴う法律の整備です。
改正個人情報保護法とCookie規制
2022年4月に施行された改正個人情報保護法では、Cookieが個人関連情報と定義されました。
これにより、Cookieデータを第三者に提供し、提供先で個人情報と結びつく場合には、本人の同意取得が義務付けられるなど、取り扱いが厳格化されました。また、改正電気通信事業法でも、情報送信に関する通知や公表、オプトアウトの機会の提供が求められています。
プライバシー保護意識の高まり
ネットユーザー自身も、自分のデータがどのように扱われているかについて敏感になっています。企業がデータをどう蓄積し、利用しているのかが不透明なことへの不安や、追跡されることへの不快感が、プライバシー保護の意識を高める結果につながっています。
オプトアウトとオプトインの違い
オプトアウトと合わせて覚えておきたい言葉に「オプトイン」があります。この2つは対になる概念であり、意味を混同しないよう注意が必要です。
オプトインは「承諾」
オプトアウトが拒否だったのに対し、オプトイン(Opt-in)は「承諾」「同意」を意味します。ユーザーが自ら「私の情報を利用しても良いです」「広告メールを送ってください」と意思表示をすることです。
メール配信における規制
日本の法律(特定電子メール法)では、広告・宣伝メールの配信は、原則として事前にユーザーの同意を得る「オプトイン方式」でなければならないと定められています。同意なく一方的に送ることは、原則禁止されています。
R消費者目線だと、初めて商品を買うECサイトで、決済を確定する直前にメール配信のチェックボックスなどを見かけますよね。
マーケターが意識すべきこと
これからのマーケティングでは、いかにユーザーから信頼され、オプトインしてもらうかが重要になります。オプトアウトされることを恐れるのではなく、データ利用の透明性を高め、ユーザーに価値を感じてもらう姿勢が求められます。
広告オプトアウトの基礎知識とマーケターの心構え
広告のオプトアウトは、インターネットを快適に使うためにユーザーに与えられた権利です。
その背景には、Cookieや識別子といった技術と、個人のプライバシーを守るための法律(改正個人情報保護法など)が深く関わっています。マーケティング担当者としては、消費者として設定方法を知るだけでなく、企業側として「なぜオプトアウトの選択肢が必要か」「オプトイン(同意)が重視される時代か」を理解しておくことが不可欠です。
本記事で解説した方法や知識を活用し、これからのマーケティング活動に活かしてください。









