マーケティングの仕事に興味があり、面白そうと思う反面「なんだか大変そう…」と感じる方も多いかもしれません。確かに、トレンドの変化が速く、覚えることも多い仕事です。一方で、それ以上に大きな魅力ややりがい、そして将来性があると私は考えています。
この記事では、マーケティングの仕事が大変と言われる理由から、具体的な仕事内容、そしてなぜ将来性があるのかまで、未経験の方にもわかりやすく解説します。
マーケティングの仕事は本当に大変?
まず、「マーケティングの仕事は大変?」という疑問からお答えします。結論から言うと、他の仕事と同じように大変な側面はあります。ただし、それ以上に魅力がある仕事だとも私は思っています。
まずは、なぜ大変なのか、その理由から見ていきましょう。
大変だと言われる3つの理由
マーケティングの仕事が大変と言われる主な代表的な理由を、3つご紹介します。
1つ目は、変化のスピードが速いこと。特にWebマーケティングの世界では、新しいSNSが登場したり、検索エンジンのルール(アルゴリズム)が変わったりと、最新情報を常にキャッチアップし続ける必要があります。
2つ目は、定量的な成果が求められること。マーケティングは売上に直結する部門です。例えば「広告費をこれだけ使って、どれだけ売上が上がったか」が数字で明確に出るため、そのプレッシャーを感じることもあります。
3つ目は、仕事の範囲が広いこと。データ分析から企画立案、SNS運用、広告の管理まで、やることが多岐にわたるため、慣れるまでは大変だと感じるかもしれません。
大変さを上回るマーケティングの仕事の魅力とやりがい
ただし、大変なことばかりではありません。それを上回るやりがいがあります。
例えば、自分の企画や施策の結果が、数字や世の中の反響としてダイレクトに返ってくることです。自分が関わった商品がヒットしたり、SNSで話題になったりした時の達成感は格別です。また、「どうすれば人の心が動くか」「どうすれば情報が広まるか」を考える戦略的な面白さもあります。ロジックとクリエイティブの両方を使う、非常に奥深い仕事です。
さらに、マーケティングの考え方は、多くの業界で必要なスキルです。一度身につければ、あなたのキャリアにとって強力な武器になります。
そもそもマーケティングの仕事とは
マーケティングという言葉はよく聞きますが、そもそも具体的にどのような仕事なのでしょうか。ここでは、その本質と、似た言葉との違いを解説します。
仕事の本質は売れる仕組みづくり
マーケティングの仕事を一言でいうと、「商品やサービスが、自然に売れ続ける仕組みを作ること」です。
これは、経営学の権威であるピーター・ドラッカーの「マーケティングの理想は、セールスを不要にすることである」という言葉にも表れています。 無理に売り込むのではなく、まずお客様が何を求めているかを調査し、それに合わせて商品やサービスを企画・開発します。そして、その価値がお客様に正しく伝わる方法を考え、適切な場所・価格・タイミングで提供する。
この一連の流れすべてがマーケティングの仕事です。
宣伝や販売促進との違い
マーケティング=広告と思っている方も多いかもしれませんが、それは少し違います。
広告や販売促進は、マーケティングという大きな活動の中の一部です。 例えば、どんなに面白いテレビCMを作っても、そもそもその商品がお客様のニーズに合っていなければ売れません。マーケティングは、「誰に」「何を」「どのように」売るかという、もっと上流の戦略全体を設計する仕事であり、宣伝や販売促進はその戦略を実行するための手段(戦術)の一つなのです。
マーケティングの仕事 具体的な職種と内容
マーケティングと一口に言っても、その仕事内容は多岐にわたります。配属される部署や担当によって、やることは大きく異なります。ここでは、代表的なマーケティングの職種とその仕事内容を紹介します。
Webマーケティング(SEO・広告運用)
Webマーケティングは、インターネットを使ったマーケティング活動全般を指します。
代表的なのがSEOと広告運用です。 SEO(Search Engine Optimization:検索エンジン最適化)は、自社のWebサイトがGoogleなどの検索結果で上位に表示されるように、記事を改善したり、サイトの構造を整えたりする仕事です。
R最近では、LLMO(Large Language Model Optimization:大規模言語モデル最適化)という、AIに紹介してもらうにはどうすればよいか、といった施策も話題になっています。
広告運用は、検索結果やSNSに表示される広告を管理する仕事です。どのキーワードに、いくらの予算で、どんな人に向けて広告を出すかを考え、効果を分析しながら改善を繰り返します。
SNSマーケティング
SNSマーケティングは、X(旧Twitter)、Instagram、TikTok、LINEなどのソーシャルメディアを活用する仕事です。 単に新商品の情報を投稿するだけではありません。「どのSNSをメインに使うか」「どんな投稿をすればファンが増えるか」「フォロワーとどうコミュニケーションをとるか」といったことを考えながら戦略を立て、企画・実行します。
ユーザーの「いいね」や「シェア」といった反応を分析し、企業やブランドのファンを増やすことが大きな役割です。
コンテンツマーケティング
コンテンツマーケティングは、お客様にとって役立つ情報(コンテンツ)を継続的に発信することで、自社のファンになってもらい、最終的に商品やサービスの購入につなげる手法です。
ここでいうコンテンツとは、Webサイトの記事(オウンドメディア)、YouTube動画、ホワイトペーパー(お役立ち資料)などを指します。 すぐにモノを売ろうとせず、まずは価値ある情報を提供することで信頼関係を築く、中長期的な視点が必要な仕事です。



web広告がプッシュ型施策と言われるのに対して、コンテンツ集客はプル型施策と言われたりもします。
商品企画・リサーチ
マーケティングの上流工程とも言われるのが、商品企画やマーケティングリサーチです。
市場調査(リサーチ)は、アンケートやインタビュー、公的な統計データなどを用いて「今、世の中では何が求められているか」「競合他社はどんな商品を売っているか」を徹底的に調べます。
商品企画は、そのリサーチ結果をもとに新しい商品のアイデアやコンセプトを考え、価格やデザイン、販売方法などを具体的に設計していく仕事です。
マーケティングの仕事の将来性
これからキャリアを築いていく上で、その仕事に将来性があるかはとても重要ですよね。特にAIの進化が著しい昨今、不安に思う方もいるかもしれません。
マーケティング職種の将来性
結論から言うと、マーケティングの仕事の将来性は非常に高いです。なぜなら、企業活動において「モノやサービスを売る」という行為は、まずなくならないからです。
特に、社会が複雑になり、お客様のニーズが多様化すればするほど、「誰に、何を、どう届けるか」を設計するマーケティングの専門知識の価値は高まります。また、世の中がデジタル化すればするほど、Webマーケティングやデータ分析のスキルを持つ人材の需要は、今後もますます増え続けるでしょう。
AI時代に求められるマーケターの役割
「AIが進化したら、マーケターの仕事は奪われるのでは?」という心配も聞かれます。
確かに、AIはデータ分析や広告の最適化といった作業は得意です。しかし、AIは「なぜ、その商品が欲しいのか」という人の心の機微や、文化的な背景を深く理解することはまだ苦手です。また、ハルシネーションという正確性の課題や、AIが考えた戦略や分析結果を、妥当性を判断しながら実行に移す人がどうしても必要です。AI時代に求められるマーケターとは、AIを競合相手ではなく優秀なアシスタントとして使いこなす人です。
AIが分析したデータを読み解き、最終的な戦略を立て、人の心を動かすクリエイティブな企画を生み出す。そうした人間にしかできない役割が、今後も求められてくるでしょう。
マーケティングの仕事に必要なスキルと向いている人
では、マーケティングの仕事で活躍するためには、どんなスキルや素質が必要なのでしょうか。専門知識は後から学べますが、土台となる基礎スキルや考え方が重要です。
必須となる基礎スキル
マーケティングの仕事には、文系・理系問わず、いくつかの共通した基礎スキルが求められます。なかでも重要なのが、データ分析力と論理的思考力です。
売上データやWebサイトのアクセス数を見て、「なぜこの数字になったのか」「どうすれば改善できるか」を仮説立てて考える力が必要とされます。また、その分析結果や企画を、社内やお客様に説明するためのコミュニケーション能力も不可欠です。そして、世の中のトレンドや新しいツールを常に取り入れる情報収集力と学習意欲が求められます。
マーケティングの仕事に向いている人の特徴
以下のような特徴がある人は、マーケティングの仕事に向いていると言えます。
- 好奇心が旺盛で、なぜ?を考えるのが好き (例:「なぜこの商品は売れているんだろう?」と自然に考えてしまう)
- 世の中のトレンドや新しいものに敏感 (例:新しいSNSやアプリは、とりあえず試してみる)
- 数字やデータを見ることに抵抗がない (例:感情論ではなく、客観的な事実に基づいて判断しようとする)
- 変化を恐れず、楽しめる (例:昨日まで正解だった方法が、今日は通用しなくても前向きに捉えられる)
マーケティングの仕事のキャリアと年収
ここでは、未経験からマーケターになった後のキャリアパスや、働く場所、そして気になる年収について解説します。
未経験から目指すキャリアパス
未経験からマーケティング職に就いた場合、まずはアシスタント的な業務(データ入力、SNSの投稿作業、レポート作成など)からスタートすることが一般的です。そこから経験を積むと、大きく分けて2つのキャリアパスがあります。
一つは、SEOや広告運用、SNSなど、特定の分野を極めるスペシャリストの道。もう一つは、チームをまとめ、マーケティング戦略全体を設計するゼネラリスト(マネージャー)の道です。将来的には、CMO(最高マーケティング責任者)を目指すキャリアもあります。
働く場所の種類(事業会社と支援会社)
マーケターが働く場所は、大きく分けて事業会社と支援会社(広告代理店など)の2種類があります。
事業会社は、メーカーや小売、IT企業など、自社の商品やサービスを持っている会社です。その会社の専属マーケターとして、一つのブランドに深く、長期的に関わることができます。
支援会社は、クライアントのマーケティング活動をサポートする会社です。短期間で様々な業界・商材のマーケティングに携われるため、広い知見とスキルが身につきやすいのが特徴です。
マーケティング職の平均年収
年収は、経験やスキル、働く企業によって大きく異なります。
未経験や経験の浅い20代では年収350万〜450万円程度がボリュームゾーン、と理解いただくとよいでしょう。経験を積み、スキルが認められるようになると、年収は上がっていきます。30代で専門スキルを身につけたスペシャリストやマネージャーになると、年収500万〜800万円以上を目指すことも可能です。特に需要の高いWebマーケティングやデータ分析のスキルを持つ人材は、高い年収を得やすい傾向にあります。
また、経験やスキルを積んで独立すれば、年収1,000万円以上を目指すことも可能です。
【独自】知っておきたいマーケティングの最新事情
マーケティングの世界は、まさに日進月歩。新しくマーケターになる方に、最低限知っておいてほしいトピックを3つ解説します。
AIの活用で仕事はどう変わるか
先ほども触れましたが、生成AIの活用は、もはや必須スキルになりつつあります。
AIは、広告のキャッチコピーの案出し、ブログ記事の草案作成、画像生成など、これまで時間のかかっていた作業を劇的に速くしてくれます。マーケターの仕事は、AIに「どのような指示(プロンプト)を出すか」「AIが作ったものを、どう業務に活かすか」という、より上流の思考やディレクション能力が問われるようになっています。



私が抱える案件すべてで、AIの使用がすでに必須になっています。
プライバシー保護(Cookie規制)への対応
これは、特にWebマーケターなら知っておきたいポイントです。数年前からWeb広告では、Cookie(クッキー)という仕組みを使って、ユーザーがどのサイトを見たかを追跡し、その人に合わせた広告を出すのが当たり前になっています。
しかし、プライバシー保護の観点から、このCookieの使用が世界的に課題視されています。GoogleはCookie利用の廃止と廃止延期&撤回と、方針を複数回にわたって変更しています。
いまのところはまだ完全廃止にはならなさそうですが、いつまた廃止が宣言されるかもわかりません。例えばリターゲティング広告のような、Cookieに頼った広告施策を主なCV獲得源としている場合、早めにほかの施策を強化ししておくことをおすすめします。
ステマ規制(景品表示法)
ステマ(ステルスマーケティング)とは、企業からお金をもらっているにもかかわらず、それを隠して個人的におすすめの商品のように宣伝する行為です。
日本では2023年10月から、このステマが景品表示法違反(法律違反)となり、厳しく規制されました。 例えば、インフルエンサーに商品PRを依頼する場合は、必ず「#PR」「#広告」「#プロモーション」といった表記を明記しなければなりません。
企業の信頼を失墜させないためにも、マーケティング担当者として絶対に知っておいてください。



悪質なインフルエンサーは、案件紹介であることを隠した方が売れる(儲かる)という理由でPR表記を隠したりすることも稀にありますので、ご注意ください。
参考元|消費者庁 令和5年10月1日からステルスマーケティングは景品表示法違反となります。
マーケティングの仕事の魅力と将来性を理解しよう
マーケティングの仕事が大変と言われる側面もありますが、それは世の中の変化に対応し、成果を追求し続けるやりがいのある仕事であることの裏返しでもあります。
データ分析や企画、SNS運用など、具体的な仕事内容は多岐にわたりますが、共通しているのは「どうすれば人の心を動かし、行動につなげられるか」を考える点です。AIの進化など変化の激しい時代だからこそ、その変化を読み解き売れる仕組みを作るマーケティングの仕事の重要性はますます高まっていくでしょう。
この記事を参考に、あなたのマーケターキャリアの第一歩に役立ててください。









